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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　町の北、約２．７Ｋｍの西青津集落の西端に位置する。新編会津風土記によると、開山は永禄１１年（１５６８年織田信長が
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　政治的実権を握った頃）。本尊は聖観音菩薩坐像。境内左に太子堂があり、聖徳太子孝養像が祀られています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西青津の往古は、鶴沼川と大川（阿賀川）の合流点から、鶴沼川側の上流約１Ｋｍの左岸、宇内集落の東に集落があり、水害
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　の度に、南へ、南へと移住を繰り返し、現在の西青津集落が永住の地になったと言います。寺も同時に移住したと伝えられて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　います。昭和３０年代の圃場整備の時に、旧字地寺内と言う土地から人骨が出土しましたが、寺院跡の特定には至らなかった
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　と言います。また酒造りの神として、元は慧日寺（えにちじ）に祀られていたと言う墨書きのある、松尾亀乗大善神が祀られています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　由来は明らかではありません。「松尾亀乗大善神」とは、「松尾」は「松尾大社」を意味します。「亀乗」とは、文字通り亀の背に
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　乗っている像形を表わします。「大善神」は一般的には、仏教の守護神である「護法善神」を表わします。いわゆる「守護神」の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ことです。「護法善神」の中の「三十番神（さんじゅうばんしん）」の１３日目に松尾神がおられます。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「三十番神」とは神仏習合の信仰で、毎日、日替わりで国家や国民を守ると言う、３０柱の神様達のことです。「松尾亀乗大善神」
は、亀に乗った松尾神と言うことになります。京都市西京区にある松尾大社は、渡来人の秦（はた）氏が氏神とした神社です。平安遷都に伴い、皇城（御所）鎮護の
神として崇敬されます。また亀は水と深い関わりがあり、秦氏は酒造の技術も日本に伝えたことから、中世以降は松尾神は、酒造の神として信仰されてきました。
「護法善神」には、梵天（ぼんてん）、帝釈天（たいしゃくてん）、四天王（してんのう）、韋駄天（いだてん）、阿修羅（あしゅら）、弁財天（べんざいてん）、大黒天（だいこくてん）などの神々が
おられます。

ちなみに、耶麻郡磐梯町の慧日寺は、現在は真言宗豊山派のお寺です。大同２年（８０７年）に、法相宗（ほっそうしゅう）の名僧徳一（とくいつ）によって開かれました。
徳一は南都（奈良）の学僧でした。布教の為に会津へ入り、勝常寺（しょうじょうじ　河沼郡湯川村）や円蔵寺（えんぞうじ　河沼郡柳津町）を建立して、会津に仏教
文化を広めました。当時法相宗は日本仏教の本流で、徳一は会津から当時の新興仏教勢力であった天台宗の最澄（さいちょう）と、「三一権実論争（さんいちごんじつ
のろんそう）」、真言宗の空海とは「真言宗未決文」など、大論争を繰り広げていました。これらの論争は、最澄の死や徳一の死によって結論は出ませんでした。
この頃の慧日寺は僧侶３００人、僧兵数千人、子院３８００院にも及ぶ程の隆盛を誇っていました。平安時代後期には、木曽義仲(源義仲のこと）の平氏打倒の
挙兵に対して、越後城（じょう）氏と慧日寺の僧兵頭乗丹坊（じょうたんぼう）の連合軍が出陣、信濃国横田河原（長野県長野市）で戦闘が行われました。この時平氏側は
敗戦し、乗丹坊は戦死、城氏は越後に敗走し、この後慧日寺は衰退します。中世の鎌倉幕府成立後は、会津を領有した芦名氏の庇護があり、伽藍の復興が
なされます。この様子は室町時代に描かれた「絹本着色慧日寺絵図（県重文）」に表わされ、複数の伽藍と共に門前町が形成されていたことが確認できます。
しかし、天正１７年（１５８９年）の伊達正宗の会津侵攻の時の兵火に遭い、金堂以外の塔頭（たっちゅう）全てが焼失します。さらに、寛永３年（１６２６年）には金堂が
焼失します。その後再建されますが、かつての大伽藍の規模には程遠いものだったと言います。明治２年（１８６９年）の、廃仏毀釈によって廃寺となります。
その後の復興運動によって、慧日寺の寺号使用が認可されて、現在の耶麻郡磐梯町で「恵日寺」と言うお寺となっています。往昔の慧日寺跡は磐梯町本寺
地区にあり、国指定史跡となって史跡公園として整備されています。平成２０年（２００８年）に、金堂が復元されました。現在は薬師坐像を復元中。

（こらんしょマップ　会津坂下町北・西部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中国梁国の僧青巌が欽明天皇元年（５４０年）に開山した高寺は、宝亀６年（７７５年）、天寧寺（会津若松市東山）衆との戦闘
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　で兵火にあい焼失、廃寺となります。大同３年（８０８年）、慧日寺の徳一（とくいつ）によって恵隆寺と共に再興され、青巌所縁の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　青巌寺と命名された寺は、何処へ行ってしまったのか。徳一は、高寺にあった恵隆寺を現在地に移し、恵隆寺を中心に高寺
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　３６坊を再建します。もともと塔寺には高寺三十六坊の慈光坊があって、徳一は高寺仏教を創始した青巌への敬慕の念から、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　慈光坊を「青巌寺」と命名し、寺院としての規模を整え、坂下一帯の布教の拠点としました。本尊は弥勒菩薩像であったと言い
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ます。平安時代末期の養和２年（１１８２年）には、慧日寺（えにちじ）と越後の城四郎長茂（じょうしろうながもち）の連合軍との戦闘で兵
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　火に遭い焼失して、高寺仏教は廃絶します。慧日寺の徳一が再建したのに何故戦闘になったのか。その頃、高寺と慧日寺と
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　の間で、教義についての論争を展開をしておりました。また越後平氏の城氏は、会津を平氏の勢力下に置こうと画策していた
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ので、慧日寺と謀議して高寺を攻撃したのです。この頃のお寺には、修行僧でありながら武器を持った僧兵と言う集団がおりま
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　した。源義経の配下の、弁慶みたいな人達です。寺同士の教義論争は、時として暴力事件にも発展したので、寺の防衛組織と
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　して修行僧が武装していました。その後再建するも、何度もの火災に遭い荒廃したのを「此所（このところ）ニ弥勒堂アリ、頽破（たいは）
セシヲ天文２０年（１５５１年）宥仙（ゆうせん）ト云（いう）沙門（しゃもん男性修行者のこと）修補ヲ加江（くわえ）草庵ヲ営ミ、弥勒仏ヲ本尊トシ客殿ニ安置ス」と新編会津風土
記に記載されています。この天文２０年を創立としています。
また異本塔寺長帳の天文２０年には、僧宥仙は河沼郡塔寺村に弥勒山青巌寺を建て、慈光院と号す、とあります。さらに幾度かの火災に遭い、昭和時代に廃寺
となってしまいました。

恵隆寺門前の旧国道４９号線（旧越後街道）を横断して、「旅籠屋（はたごや）　鍋屋本家」と言う「塔寺町並み保存会」作成の看板が架かった、民家脇の路地を入
り、寺橋を渡った現在塔寺地区の集会所となっている、墓地を含む一帯が青巌寺跡です。青巌所縁の青厳寺は廃絶しましたが、高寺の子院だった恵隆寺は
移築再建後は、現在の繁栄を観ています。今は、お地蔵様がひっそりと佇むだけで、青巌寺跡は昔日の面影はありません。ここが高寺仏教の終焉の地という
思いに、町出身者としては、寂しさを禁じえません。

（こらんしょマップ　会津坂下町北・西部）　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会津坂下町の東端、国道４９号線を会津若松から宮古橋（私の子供の頃は村田橋と呼んでいました）を渡り、宮古地区村田集落
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　に入ると国道沿いに建つ。新編会津風土記には、寛永元年（１６２４年　桂離宮、日光東照宮完成の年）に、真言宗の僧覚院（かく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いん）、河沼郡村田村に長栄寺を開基、とありますが、このお寺の事と思います。本尊は不動明王立像。脇侍の普賢菩薩立像には
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「明和６年（１７６９年老中田沼意次の経済改革の頃）御用仏師（姓名不詳）像立」との墨書きがあります。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　国道４９号線を会津若松から大川（阿賀川）に架かる宮古橋を渡り、村田集落に入ると道路沿いに面して建つ。会津若松市を車
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　で往復すると「何故ここにお寺が・・・？」と、いつも気になったお寺です。明治１５年（１８８２年）の三方道路開削工事の時、路線
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　が集落の中央を貫通した為、境内が南北に分断されたそうです。明治以前はこの寺を中心にして集落が営まれていたようで、こ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　の時本堂や墓地の犠牲は多大であったと言うことです。この時、道路に掛ったお墓は集落北に、強制移転させられたと言います。
更に度々の道路拡幅工事で、墓の全てが集落北の墓地に移転しました。私が高校生の頃までは、境内に観音堂があり子安観音が祀られていましたが、近年腐朽
が激しくなってきた為と、国道４９号線拡幅工事の為取り壊し、観音像は本堂に安置されています。

会津古塁記には、河沼郡村田村柵、東西２８間（５１ｍ）南北３１間（５６ｍ）安元２年（１１７６年この年号は２年しかない）黒沢尻右兵衛尉正房（くろさわじりうひょうえのじょう
まさふさ）、此人（このひと）安倍頼時（あべのよりとき）之四男正任（まさとう）之子小五郎正勝（こごろうまさかつ）之二男ナリ。会津ヲ逃退レ大寺恵日寺仕ウ。村田ヲ領シテ此処二住
ス。ソレヨリ二十八代村田文治右衛門房長（むらたぶんじえもんふさなが）、天正十七年（１５８９年）牢人（ろうにん失職）ス。とあります。河沼郡村田村に東西５１ｍ、南北５６
ｍ規模の村田館があり、１１７６年安倍頼時の四男正任の子、小五郎正勝の二男の黒沢尻右兵衛尉正房が、会津を撤退して耶麻郡恵日寺に仕え、村田を拝領
してここに住む。それから２８代後の、村田文治右衛門房長の時の天正十七年（１５８９年）、伊達正宗の会津侵攻で芦名家と共に恵日寺も敗れ、俸禄を失って
流浪（ホームレス）することになった、とあります。館の位置は現在では定ではありません。おそらく長栄寺のあたりが館跡と推察します。その遺構は確認できません。
明治の三方道路開削工事と、その後の度重なる道路拡幅工事により破壊されたのでしょう。
前９年の役（１０５１～１０６２年）の奥州側の首謀者、安倍頼時・貞任（さだとう）所縁の武士が、１００年後・５００年後までにも会津に居たのですね。

（こらんしょマップ　会津坂下町東部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　坂下厚生病院前の道路を南へ、ＪＲ只見線の踏切から約１．８ｋｍの牛沢（うしざわ）集落の西端、田沢川に架かる無明橋を渡った
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　段丘上に位置する。本尊は釈迦如来坐像。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大同年間（８０６～８０９年）耶麻郡慧日寺の徳一が高寺を再興した頃に、高寺３６坊の一つの大徳坊がおかれ、後に大徳寺に
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なったと伝えられています。山門前の橋が無明橋と言い、高寺仏教が繁栄した頃見明集落にあったとされ、無明門（見明門）を
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　彷彿とさせます。異本塔寺長帳に、天寧寺（てんねいじ会津若松市）南栄（なんえい）の弟子大円（たいえん）は、河沼郡牛沢村に牛沢
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山大徳寺を建てる、とあります。新編会津風土記では、天文１７年（１５４８年　室町時　代末期で群雄割拠してきた頃）に祖察（そ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さつ）と言う真言宗の僧が大徳坊を創建したとあり、この年を創建年としています。さらに、天正９年（１５８１年　本能寺の変の前
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　年）に僧高岩（こうがん）が天寧寺仁庵（じんあん）を講じて開山とするとあり、この時に真言宗から曹洞宗に改宗しました。嘉永元年
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（１８４８年　江戸湾防衛の為お台場建設の頃）に焼失、その後の再建ですが昔日の風格を漂わせる寺院です。本堂には隠し
部屋もある建築構造になっています。隠し部屋は、防犯対策や秘密会議などに使用されたと考えます。本堂には火災から免れた五智如来像、馬頭観音像など諸仏が安置されています。また脱衣婆象があることから、閻魔堂もあったのではないかと推測します。本尊も含めてこれらの諸像はｍ天正年代（１５７３～１５９１年）から
継承されて来たと言います。その他大日如来坐像、不動明王立像、三十三体観音像などが安置され、創建当初は境内に如来堂、観音堂などの諸堂が建ち並ぶ
真言世界を表現した壮大な寺院であったであろうと推察します。総欅造りの山門は昭和５８年（１９８３年）の再建で会津坂下五山定林寺の山門と同一設計。鐘楼は
平成７年（１９９５年）の再建。

牛沢の集落名は、空也上人（９６４年冬木沢八葉寺開基会津若松市河東町）が仏教を広める為、都（京都）から会津に下って恵隆寺参拝に牛に乗って赤沢まで
来た時、この牛が急死して石になったので「牛沢」と改められたと言う。若宮郷土誌によると、それ以前は集落を「赤沢」と呼んでいたと記載されています。赤沢の名
の起こりは、大徳寺門前の無明橋の架かる田沢川の水が鉄分を多く含み、川石が赤く変色するので村名が赤沢となったと言います。今の川はコンクリートで護岸が
固められていますが、川底はやや赤みがかって見えます。明治後は、若宮村役場、牛川小学校、駐在所などの所在地として若宮地区の行政の中心地でした。
近所のお年寄りに聞いたら、６０歳代前の住民の中には、山号を「ぎゅうたくざん」と読める人の数も減ってきていると話されていました。

（こらんしょマップ　会津坂下町南部）　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会津坂下町の東、大川（阿賀川）沿いの束原集落南に鎮座する。祭神は誉田別命（ほんだわけのみこと　応神天皇のことで武神　軍神
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とも、戦の神様）祭日は９月５日。前九年の役（１０５１～１０６２年）の天喜３年（１０５５年）、源頼義・義家親子は「黄海（きのみ）の戦い
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（岩手県東磐井郡藤沢町付近）」では作戦ミスで敗北。頼義自身も眼病を患った為、いったん会津まで退却します。源頼義・義家
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　親子はここに源氏の氏神の八幡神社を祀り、本営を置いて奥州（東北）各地に軍勢展開を指揮する兵站基地としました。この時が
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　源頼義・義家親子の坂下来征となります。束原集落の開村は、この頃ではないかと考えます。兵站基地での炊事・軍馬・兵糧の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　調達などで、周辺から人が集まり始めたのではないかと考えます。神社のあたりは当時は軍事基地なので、一般の住民は入れま
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　せんでした。束原の鎮守神ですが、神社と住民の居住区が離れているのはこの為です。会津坂下町内では、この八幡様だけが
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「正八幡」となっています。この時、下政所地区に陣を敷いて、戦勝祈願と病平癒を祈念し、京都の「岩清水八幡神社」から、塔寺
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　松原地区碧山（みどりやま）に「心清水八幡神社」を勧請しました。ここで軍勢を立て直した遠征軍は、下政所の白旗八幡神社付近の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　初戦に先勝、前九年の役の勝利につながると言う由緒のある所です。昔の境内は数多くの巨木に覆われてうっそうとしていて、
磐梯山の頂上からも神社の位置を容易に確認できたと言います。磐梯山の伝説の妖怪、手長・足長（てなが・あしなが）も山頂からこの八幡様を眺めていたのかな？

磐梯山の妖怪伝説の「手長・足長」とは・・・、ｉｎ会津坂下かたりべヴァージョン。
むがぁ～し、むがしな、磐梯山さ手長足長っつうバゲモンがいだんだど。
昔、昔のこと、磐梯山に手長足長と言う妖怪が住んでいたそうだ。
手長はな、磐梯山さ腰掛げで猪苗代湖の水で顔を洗えるぐれぇ手が長がったんだど。
手長はね、磐梯山に腰を掛けて猪苗代湖の水で顔を洗えるほど手が長かったそうだ。
足長は、磐梯山と明神岳をひどまだぎでぎるぐれぇ足が長ぐで、でっけがったんだど。
足長は、磐梯山と明神岳をひとまたぎできるほど足が長くて、大きかったそうだ。
足長は磐梯山さ立っちな、雲さかじあづめでお天道さまかぐしだり、手長はっつーど猪苗代湖の水はぁかじ上げで雨降らしだりしで、わっさばっかやってだんだど。
足長は磐梯山の上に立って、雲をかき集めて太陽の光をさえぎったり、手長はと言うと猪苗代湖の水をかき上げて雨を降らしたりして、悪さばかりしていたそうだ。
んだがら下の村はぁ、いっつも曇りが雨ばっかで、はだげつぐらんにぐで困っつまってだんだど。
だからふもとの村は、いつも曇りか雨の天気ばかりで、作物も育たず困り果てていたそうだ。
ある日のこどだ、旅の坊さまが村さ来だがら、「何とがしてくんつぇ」って頼んだだど。
ある日のこと、旅のお坊さまが村にやって来たので、「何とかしてください」とお願いしたそうだ。
「よがんべ、やっつげでやんべ」つって坊さまは壺さ持っで山さ登っただど。そんじ言わっちゃだど。
「いいでしょう。退治してやりましょう。」と言ってお坊さまは壺を持って山へ登り、そして言われたそうだ。
「おーい手長足長、おめだじどんなかっこにでもなれんじゃな。じゃったらこの壺に入れっか。」って言わっちゃだど。
「おーい手長足長、お前たちはどのような姿にでもなれるそうだな、ならばこの壺にはいることはできるか。」と言われたそうだ。
すっと手長足長の二人は、「あだりめぇだべ、そんなごどてぇしたごどねぇ。」ど言って壺ん中さ入っちまったんだど。
すると手長足長の二人は、「あたりまえだ、そのようなことはたやすいことだ。」言って壺の中に入ってしまったそうだ。
坊さまはすぐ壺のふたしめで、護摩だきしで手長足長を閉じ込めっちまったんだど。
お坊さまはすかさず壺のふたを閉めて、護摩を焚き祈祷して手長足長を閉じ込めてしまったそうだ。
その旅のお坊さまはな、わけぇ頃の弘法大師さまだったっつう話だ。
その旅のお坊さまは、若き日の弘法大師様であったと言う話だ。
そんじな、今も磐梯山のてっぺんの磐梯明神の祠さ、手長足長が祀ってあんだど。
そう言うことで、今も磐梯山の頂上の磐梯明神の祠には、手長足長が祀ってあるそうだ。

（こらんしょマップ　会津坂下町東部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会津坂下町の東、最明寺舟渡場対岸の福原（ふくはら）集落の西南端に位置します。創立開山は新編会津風土記によると、元和９
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　年（１６２３年　徳川家光が三代将軍就任の年、会津蒲生家３代忠郷（たださと）統治の頃、この年上杉景勝が亡くなる）に佐瀬嘉左
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　衛門（さぜかざえもん）が河沼郡福原新田村を開く、同村に禅宗（宗派不明）の僧隣悦（りんえつ）、徳正寺を建立とあります。本尊は阿弥
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　陀如来坐像。寺号は、この寺を創建した佐瀬嘉左衛門徳正（のりまさ）の名を取って名付けたと伝えられています。創立当初は荘厳
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　な寺院だったそうですが、明治１２年（１８７９年沖縄県発足の年）の集落の火災で被災し本尊以外は全て焼失、明治２１年（１８
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　８８年鹿鳴館外交華やかな頃）になって再建されて、現在に至ります。境内に太子堂があり、聖徳太子孝養像が祀られています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　太子講の祭日は８月２２日。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　福原集落は、鶴沼川の河川敷で、天文５年（１５３６年室町時代）の白髭の大水と言う大洪水で、本流が大川に移動した跡の、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　荒地の通称福河原を開墾してできた集落です。新編会津風土記に肝煎佐瀬嘉左衛門とあります。現在集落内に、立派な長屋
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　門を構える佐瀬家の祖です。境内には会津の相撲力士四股名（しこな）玉簾（たますだれ）の五輪塔墓も。昔は金上地区の中心地で、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小・中学校、派出所、簡易郵便局が設置されていました。会津坂下町と合併した際に派出所と簡易郵便局は坂下に統合されました。

ここで、少し沖縄県について勉強してみましょう。
沖縄県は、正長２年（１４２９年室町時代）尚（しょう）氏によって琉球王国が建国されます。中国大陸や東アジアの影響を強く受けた独特の文化を持ち、独立した王権
国家を成立させていました。王都は首里城（沖縄県那覇市首里）で、守礼の門（復元）は現在観光名所として有名（城は、太平洋戦争の時のアメリカ軍の攻撃により
焼失）。織田信長はこれを黙認し、天下統一に全力を挙げますが、すでに国内割譲の余地が無くなった豊臣政権下では、領地拡大策として薩摩藩（鹿児島県）に
よる侵攻を命じますが、朝鮮出兵の為に中断します。徳川政権になった慶長１４年（１６０９年江戸初期）に薩摩藩による侵略で、同藩の実効支配を受けるようになり
ます。明治１２年（１８７９年）、明治政府の「琉球処分」により沖縄県が設置されます。太平洋戦争末期の昭和２０年（１９４５年）の沖縄戦では、住民に多数の犠牲を
出して終戦、その後アメリカの進駐統治下に入ります。自由民主党佐藤栄作首相政権下の昭和４７年（１９７２年）、沖縄返還によって日本に復帰しました。

「琉球（りゅうきゅう）」処分とは・・・、
沖縄の前身「琉球」は中国隋、元、明の記録に出ていて、古来より日明、日清が互いに領有権を主張していました。明治政府の廃藩
置県の時、政府は琉球王国を強制廃止し、琉球藩を設置します。しかし清政府はこれに反発、古来より中華帝国の領土であると主張します。明治政府は琉球領有
の正当化の為に、台湾人による琉球住民殺害事件の報復として台湾出兵を行います。さらに明治政府は、軍隊と警察を派遣して、琉球藩の廃止を一方的に宣言し
て鹿児島県に編入し、同年中に沖縄県を設置します。この一連の動きが明治政府による「琉球処分」の概要です。これに抵抗する琉球王族・士族はいましたが、
結局清国による武力介入は行われず、琉球王国は中央集権的日本国家の枠組みの中に組み入れられて消滅します。琉球王家の尚（しょう）家は現在も続いています。
沖縄は本来大陸や東南アジアの影響を受けた、独自の文化を持った独立国であったことを理解し、沖縄を訪問する時は沖縄の歴史的な背景を念頭に置いて行動
すべきと考えます。ちなみに、私の弟の嫁は沖縄県糸満市の出身で、実家は現在も「姫ゆりの塔」の直近にあります。嫁の両親は戦後間もない頃から、洞窟の「墓
守り」をしていました。終戦直後は、米兵の報復が怖くて昼間は洞窟の整理が出来ず、夜暗くなってからこっそりと整理作業や弔いをしていたそうです。沖縄返還後は
国や県の管轄になりました。それでも毎日のように、清掃や弔いを行っていたそうです。それに対して、国や県からは何のねぎらいの言葉を聞くこと無く、嫁の両親は
他界しました。沖縄のどこの家族にも。このような話があると言います。

（こらんしょマップ　会津坂下町東部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　藩政時代は米沢街道佐野の渡しの坂下側の舟着場があった会津坂下町の東端、大川（阿賀川）沿いの細久名（さいくな）集落の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　本光山妙福寺本堂東隣が地蔵寺です。本尊は木造地蔵菩薩坐像。開基不詳。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　地蔵菩薩像、堂宇の開基は妙福寺よりも古く、嘉元年間（１３０３～６年）以前と考えられます。長く妙福寺の塔頭となっていました
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　が、昭和２８年（１９５３年）に福島県の認可を得て独立し、地蔵寺と改称しました。新編会津風土記には「モト村北八町計（ばかり）ニ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アリ、慶長十九年（１６１４年）閏（うるう）二月二九日此処（ここ）ニ遷（かえ）レリ」とあります。元は集落の北約０．９Ｋｍの所にありましたが、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　天文５年（１５３６年）の白髭の大水で越後国松ガ崎（現在の新潟県新潟空港域）まで流された後、慶長１９年（１６１４年　会津大地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　震の年）に、地蔵菩薩像が返還されたのを契機に現在地に再建されたと伝えられています。地蔵菩薩像は会津坂下町重要文化
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　財に指定されています。子安地蔵として、地域住民の信仰を集めています。

細久名集落は、大同元年（８０６年）、磐梯山が噴火・隆起した時に猪苗代湖が陥没（会津温故拾要抄）して、４９ヶ村が湖底に沈んだ村々の中に「細久名」の村名も
あったと言われ、そこから避難した村人が、この地を開いて村を作ったと伝えられています。お地蔵様にはこんな言い伝えがあると、境内を清掃していた住民の方が
教えてくれました。

行李（こうり　今で言うスーツケース）を担いだお地蔵様ｉｎ会津坂下かたりべバージョン・・・、
鎌倉の終わり頃だぁ～、黒川の実成寺の日尊（にちぞん）様が出羽の国がら熊倉村まで来たどき、どっからか小僧が出てきただど。
鎌倉時代の終わり頃（嘉元年中（１３０３～１３０６年）黒川（会津若松市の旧名）の実成寺開山日尊（にちぞん）様が出羽国（山形県）から、耶麻郡熊倉村（喜多方市熊倉町）に差し掛かった時、
どこからともなく一人の小僧が現れました。
小僧は日尊様さ言ったど。「おらの村の人だぢが病でもがいでいんだし。おねげえだから坊さまの法力で村の人だぢ助けでくなんしょ。」って言ったたど。
小僧は日尊様に語りかけそうだ。「私の村の人々が病にかかり苦しんでいます。お願いですから、お坊様の法力で人々を病から救ってください。」と言いました。
小僧は日尊様のこおりを肩さかつぐど、ある庵の前まできで、なじょほどもお礼を言うとどっかさ行っちまっただど。
小僧は日尊様の行李を肩に担ぐと、ある庵の前までやって来て、礼の限りを尽くして、何処かへ去って行ってしまった。
日尊様はおがしいなぁと思って庵主様にきぐど「うっつぁさ小僧はいねぇがらし。んだげんじょも地蔵の霊像があっから、その化身かもしんにがらし。」っつうので
日尊様は不審に思って、庵主様に訊ねると「うちには小僧はいません。でも地蔵の霊像があるので、その化身かも知れません。」と言うので
ふたんじ地蔵堂さ入って見っと、なんだってまーお地蔵様が日尊様のこおりをかださかづいでいんじゃねーの。
二人で地蔵堂に入って見ると、なんと！お地蔵様が日尊様の行李を、肩に担いでいるではないか。
日尊様は感激しで、庵主様のおねげぇきいでお地蔵様の背中さおでぇもくかいで、石さ「みょうほうれんげきょう」の五つの字書いで御祈りしただど。
日尊様は感激し、庵主様の求めに応じて、お地蔵様の背中にお題目を書き、また石碑に「妙法蓮華経」の五文字を書いて、攘災の法（じょうさいのほう災厄除けのこと）を行いました。
すっとむらん人だちみぃ～んなの病がすっかりなぐなっただど。あ～！ありがたや！ありがたや！（合掌）
すると、この村の全ての人々の病の苦しみが取り払われたそうです。あ～！ありがたや！ありがたや！（合掌）

地蔵寺の前に日尊が書いたと言う「妙法蓮華経」のお題目を彫った石碑が、今も霊験あらたかに鎮座しています。ここのお地蔵様は広く近隣諸国の人々に信仰され
ていたようで、天文５年（１５３６年室町時代末期）の白髭の大水で、遠く越後国松ガ崎（新潟県新潟空港がある地域）まで流されましたが、約８０年後の慶長１９年
（１６１４年）の江戸時代初期になってから、沿道の村々の子供たちが、手押し車に乗せて村送りをしながら、ここまで送り届けられて来たと言うエピソードが伝えられ
ています。往古の新潟市付近の日本海は、もっと内陸部に迫り、阿賀野川（阿賀川）は河口付近で信濃川と合流して、広大な河口域と湿地帯を形成していました。
明治になって分流工事が行われ、現在の流域となっています。越後国松ガ崎こそが、阿賀野川（阿賀川）水運の港町で日本海側の会津への入口でした。お地蔵様
は湿地帯のどこかに漂着したもので、それが無かったら海へ流出してしまい、行方不明になってしまったことでしょう。超ラッキーな、お地蔵様ですよね。行李（こうり）を
「今で言うスーツケース」と解説しましたが、実際は竹や柳、藤などを編んで作られた蓋付きの箱のことです。旅行の時の荷物入れや衣類の収納など、昭和４０年代
まで広く用いられていました。旅装の欧米化や収納形態の変化と共に流通しなくなりました。現在ではお相撲さんの「明け荷（廻し、化粧廻し、浴衣などを入れる）」に
見られる程度です。

（こらんしょマップ　会津坂下町東部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　坂下厚生病院前の道路を南へ、ＪＲ只見線の踏切を渡り１．５Ｋｍの牛沢集落を抜け、磐越自動車道の坂下トンネル近くの隧道を
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くぐった大村（おおむら）集落入口の東に位置する。創建は会津旧事雑考に、明応元年（１４９２年　コロンブスがアメリカ大陸を発見
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　した年）、下総国（しもうさこく　千葉県南西部、埼玉県東端、東京都隅田川東岸）の僧能山（のうざん）は稲川荘台村（だいむら大村）に
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　泉養寺を建てる、とあります。本尊は釈迦如来坐像。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　明応元年の創建当時から、会津では地震や洪水などの災害が相次ぎ、寺は現在地よりさらに東へ０．１Ｋｍの所にあったと言い
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ます。いつの頃からか、現在地に避難し移ったと言われています。集落の位置は、会津盆地西縁断層帯の造山活動で形成さ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　れ、田沢川によって浸食された段丘上にあります。寺の旧地とされる場所は、水田となっていてかなりの低地となっており、現在
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　の田沢川の流域を見ても、移転の理由は容易に判断できます。大村の昔は台村（だいむら）であったのが、大村（だいむら）となり、いつ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　の頃からか大村（おおむら）になったと言います。なお開村は、天正２年（１５７４年　織田信長が政権を奪取した年）頃と伝えられて
います。また寛文年間（１６６１～７２年）に、本尊が阿弥陀如来から釈迦如来に変わったと言いますが、理由は分かっていません。

ちなみに、宇内地区の「勝負沢峠」から見明―塔寺―杉―船窪―大村―勝方を通り、高田（会津美里町高田地区）―本郷（会津美里町本郷地区）―黒川（会津
若松市）へ至る山裾の<道は、越後街道が会津盆地を横断する以前の、会津と日本海側を往来する太古の「越後街道」でした。また、越後・会津から現在の関東
地方へ通る古代の「山の辺の道」の一部でした。会津坂下伝説の怪盗「塔寺八反（とうでらはったん）」の逃走ルートもこの道だと言い、別名「八反道」とも言います。
開津―古坂下―川尻（古町川尻）―新舘―塔寺に至る旧越後街道の基となるルートは、天喜３年（１０５５年）の前九年の役（１０５１～６２年）の時に源頼義、義家
親子が塔寺に心清水八幡神社を勧請する為に通った、言わば軍用道路でした。偶然ですが町内の、現在の国道４９号線が、それに近いルートになっています。
何でもないような一本の道路にも、結構面白い歴史があったりするんですよネ！

怪盗塔寺八反ｉｎ会津坂下かたりべヴァージョン
むが～しむがしのごどだ。とうでらさとうでらはったんつうあだなのどろぼうが　いだんだど。
昔むかしの話しだ。塔寺に塔寺八反と言うあだ名のついた泥棒がいたそうだ。
そのどろばうはなじょほどもあしがはやぐってでえかんじょのやぐにんはなんじょしてもつかまんにがらくやしがっていただど。
その泥棒はたいそう足が速くて、代官所の役人はどうしても捕まえられないので、口惜しい思いをしていたそうだ。
しなもんをぬすむどそのばんのうちにさんのうとうげこえていまいちとかかぬまさいってあさいちでぜににかえてごぜんにかえってひるはねでただど。
品物を盗むと、その夜の内に山王峠を越えて今市（栃木県今市市）や鹿沼（栃木県鹿沼市）に行き、朝市に出して金に代え、午前中には帰って来て昼は寝ていたそうだ。
いまいちがかぬままでいってうっちまうんでしょうこがねえがらそんどきのやくにんはつかまえらんにがったのな。
今市や鹿沼まで行って盗品を売ってしまうので、証拠が無いので当時の役人としては捕まえることができなかったようだ。
とうでらはったんはあしがはやがったがらもどはひきゃくのしごどしてだんだど。
塔寺八反は足が速かったので、元は飛脚の仕事をしていたそうだ。
あるときひきゃくのしごとちゅうにやまんなかでおいはぎにあっちまったんだど。
ある時、飛脚の仕事中に、山中で追いはぎに遭ってしまったそうだ。
そんじもちからもぢでもあったからたちまちおいはぎだぢやっつけっちまったんだど。
それでも力持ちでもあったので、たちまち追いはぎ達をやっつけてしまったそうだ。
そしたらおいはぎだちが「どうだべおらだちのおやぶんになってくなんしょ」ってたのまっちゃのがどろぼうになったきっかげだど。
そうしたら、追いはぎ達が「どうでしょ、我々の親分になってほしい」と頼まれたのが泥棒になるきっかけだったそうだ。
とうでらはったんのあだなのゆらいははったんのきれをつないでかたっぽをこしさまいではしっともうかたっぽはつちさつかねほどはやかったんだど。
「塔寺八反」のあだ名の由来は、八反の布をつないで、片方を腰に巻いて走り出すと、もう一方の端が地面に付かないほど速かったそうだ。
そんじもとしとってきてはやぐはしらんにぐなってきたんでだいかんじょさじしゅしたんだど。そんじようしゃなくわかまづでひあぶりのけいになったんだど。
それでも、歳をとって来て速く走れなくなってきたので、代官所に自首して出たそうだ。そして情状酌量の余地なく、若松で火あぶりの刑になったそうだ。
自分の得意な事を、世の為、人の為に生かす努力が大事ですよね！「ならぬことは　ならぬものです」　おしまい。

着物一着分の布一反の長さは約９ｍだから、八反は７２ｍとなります。「塔寺八反」の足の速さってドンダケェェ～！！！

（こらんしょマップ　会津坂下町南部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会津坂下町の西、高寺山東の山裾（会津坂下の人は見明山と呼ぶ）の見明（みみょう）集落入口に位置する。会津旧事雑考（あいづ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くじざっこう）によると、高寺三十六坊の一つ清松坊が集落北東にあって、承和６年（８３９年平安時代藤原氏が台頭してきた頃）、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　稲川荘見明邑に明慶山清松寺建つ、とありますから元は相当古いお寺です。本尊は会津坂下町では唯一の脱乾漆（だつかんしつ）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　造りの延命地蔵菩薩半跏像です。集落名の由来は会津鑑によると、欽明天皇元年（５４０年）中国梁の僧青岩（せいがん）が高寺山
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　に草庵を結び、斉明天皇４年（６５８年）蓮空（れんくう）が高寺を造営した頃、村に無明門（むみょうもん）があり、高寺が隆盛を極めた頃
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　に見明門（みみょうもん）と改めたことが村名の由来とされています。集落の鎮守の大山袛神社付近に見明門あって、坊舎もあったと
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　伝えられていますが門の礎石や遺構は、まだ発見に至っていません。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　寺は、宝亀６年（７７５年）に天寧寺（てんねいじ会津若松市東山）との戦闘で高寺が兵火に遭い焼失しますが、延暦２３年（８０４年）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　僧利仁（りじん）が再興して隆盛を誇った頃に高寺の末寺として清松寺が開基されました。養和元年（１１８１年）、今度は陣が峯城
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　の城四郎長茂（じょうしろうながもち）と恵日寺の連合軍の攻撃で兵火に遭い高寺が再び焼失します。この時当寺も難に遭いますが、
天正元年（１５７３年）になって僧光覚（こうかく）が再興します。さらに新編会津風土記に、文禄４年（１５９５年　豊臣秀吉が秀次を切腹させた年）に火災に遭って寺、
本尊の全てを焼失したとあります。正保元年（１６４４年）僧朔雲（さくうん）が住持となってから恵倫寺（えりんじ会津若松市）の末寺となり、この時に真言宗から曹洞宗に
改宗しました。本堂の腐朽が激しくなってきたので、昭和６２年（１９８７年　国鉄の分割民営化の年）に改築しました。寺より離れた集落西に太子堂があり,聖徳太子
孝養像が祀られていますが、草創期の寺はその辺りに造営されていたものと推定します。

脱乾漆造りとは、木の骨組みに荒縄を巻き付け、その上に砂を混ぜた塑土で仏像の大まかな形の原型を作ります。塑土が乾いた所に、麻布を漆で貼り付けます。
そして、木屑漆で詳細な造形を施します。漆が乾燥したら、型の塑土を像の底の部分から取り出します。最後に、像に彩色や宝飾を施して仏像が完成します。
これが脱乾漆造りです。いわゆることろの張り子とはちがいますが、みたいなものです。彫像や鋳造よりも、はるかにリアリティのある像を作成することが出来ます。
中空なので軽くて丈夫と言うのが特徴です。脱乾漆像で有名なのは、唐招提寺の鑑真和上（がんじんわじょう）像です。あれって超リアルな像ですよね。鑑真和上の生
前の姿そのままを映したものだそうです。駅のベンチ、公園の遊具や軽量船舶などに使用されている、グラスファイバー（ガラス繊維）を、プラスチックで塗り固め
たＦＲＰ樹脂の技術は、この脱乾漆技術を応用した物です。脱乾漆像は、延暦８年（７８９年）造東大寺司（ぞうとうだいじのつかさ東大寺、大仏の造営、写経事業をする
役所）の廃止と共に作像されなくなりますので、清松寺の本尊は寺の開山年よりも古い仏様と言えます。正保元年の再建時にもたらされたと考えます。ＴＶドラマ
「水戸黄門」のクライマックスシーンで「この紋どころが目に入らぬかぁ～！」と出てくる「印籠」は、木工製品ではなくて紙や布を漆で塗り貼わせた、乾漆技法で
作成されたものです。江戸時代中期、戦乱が収まり徳川政権が安定期に入ると、庶民文化が華やかになり文化芸能だけではなく、当時のディスカバージャパン
「お伊勢参り」や「金毘羅参り」の流行に伴い、旅行の必需品として、薬やハンコを入れるウエストバックとして、生産されるようになったものです。

（こらんしょマップ　会津坂下町北・西部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　坂下厚生病院前から南へ、ＪＲ只見線の踏切を渡り１．７ｋｍの牛沢集落を通過、さらに磐越自動車道の隧道をくぐり、１．５ｋｍの
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　勝方（かちがた）集落の西、会津盆地西縁断層帯の造山活動によって形成された扇状台地上に位置する。１５ｍ程の石段を登り、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山門から後ろを振り向くと会津平野を眺望できて、素晴らしく見晴らしの良い所に立地する。新編会津風土記には、永正１１年
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（１５１４年　室町末期）曹洞徒の隣覚（りんがく）は稲川荘勝方村に勝方寺を建てる、とあります。創立時の寺院は、現在地より更に
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　１００ｍ程奥の山中にあったとされています。本尊は釈迦如来坐像。寺は昭和２８年（１９５３年）に火災で焼失、昭和４１年（１９６
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　６年）になって鉄筋コンクリートの、向拝造りの耐火構造で再建されました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　勝方村は、天喜５年（１０５７年）の塔寺八幡宮神役目録に、勝方の村名が載っているいるので、古くから開かれた村です。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　寺の裏山が墓域となっています。更に奥まった所には戊辰戦争当時、鶴ヶ城内へ避難できず住民の協力を得て当地まで辿り
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　着きました。しかし、城下が燃える煙を観たのと南摩氏・町野氏が戦死したとの情報に前途を悲観して、会津藩士一番隊組頭
（くみがしら現代の軍事組織では小隊長か）南摩三右衛門（なんまさんえもん）一家と、士中朱雀二番隊組頭町野源之助（まちのげんのすけ）一家の２家族、４７歳の母親から
４歳の子供まで８人の、集団自決と言う凄惨な事件がありました。後に主人の戦死は誤報だったという事でした。この霊を弔うため、平成５年（１９９３年）に末裔の
方と会津坂下の有志の協力で、殉難碑が建てられました。碑は約３００ｍ程の山中にあります。毎年９月に、慰霊祭が行われています。

（こらんしょマップ　会津坂下町南部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　町の北、約２．２Ｋｍの下政所集落の西端に位置する。創立開山不詳。本尊は地蔵菩薩坐像。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　新編会津風土記には、天和（てんな）３年（１６１７年徳川家康死去の翌年）真言宗から曹洞宗に改宗、本尊地蔵菩薩坐像を安置
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　したとあります。火災に遭ったという記録はなく、腐朽が激しくなったので、昭和１１年（１９３６年ニ・ニ六事件の年）に改築されて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　現在に至ります。その際内陣、欄間は往時の部材を使用したと言います。本堂の一部は集会所として利用されています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　下政所は、陽明文庫の「近衛家所領目録」には、冷泉（れいぜい）家領とあり、冷泉宮環子（れいぜいのみやけんし）内親王の所領でした。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　摂関家領の荘園で、蜷川（いながわ）荘の政庁が置かれていたと言われています。集落は、元は北へ０．３Ｋｍ程離れた所にありま
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　したが、度々の水害から逃れて現在地に移住して来たと言います。重福寺の立つあたりは、中世の政所舘があった所と言います
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　が、学術調査が行われていないので詳細は分かっていません。境内の一部に、土塁跡かと考えられる形跡を見ることが出来ます。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　館は再建されることがなかったようです。

政所舘は、源頼朝の奥州征伐の後、会津四郡（会津郡、河沼郡、大沼郡、耶麻郡）を佐原十郎義連（さわらじゅうろうよしつら　芦名氏祖）に与えられた後の、佐原・芦名
氏配下の武将の一人の館と思われます。「真壁文書（まかべもんじょ）」によると、観応３年（南朝元号正平７年１３５２年南北朝時代）に、三浦若狭守（みうらわかさのかみ　
芦名直盛のこと）が、下政所館を攻めたとの記録があります。南北朝時代では、芦名一族は南朝方に付きましたが、会津には北朝方に呼応する武将もいたので、
会津各地で戦闘がありました。「真壁文書」とは、常陸国真壁（茨城県桜川市真壁町）の真壁家に伝わる古文書類で、中世武家の土地売買、相続、駐軍、土地所
有など多方面にわたった、常陸国真壁地方を中心とした記録です。会津の芦名氏と常陸国（茨城県）佐竹氏は姻戚・同盟関係にあり、佐竹氏より養子を得て芦名
家当主とした時期もありました。このような関係から常陸佐竹家は、会津に芦名家よりの拝領地があって、真壁家はその代官を務めており、駐在員も常駐していま
した。南北朝の動乱期や上杉氏、伊達氏との小競り合い、芦名家内部の政治主導権争いや、他武家との領地争いなどの抗争時には、佐竹氏側より応援部隊の
来援があったので、会津関係の記述も記載されているのです。

（こらんしょマップ　会津坂下町北・西部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高田街道羽林（はばやし）集落の入口に位置する。羽林集落は、会津旧事雑考（あいづくじざっこう）の天喜５年（１０５７年）に、集落名の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　記載があり、早くから開けていた所です。集落周辺の地形を見ると、往古の鶴沼川が運んできた土砂が堆積してできた丘陵地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　であることが観察出来ます。寺の創立は、新編会津風土記の文禄２年（１５９３年豊臣秀吉朝鮮出兵の文禄の役の頃この時の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会津領主は蒲生氏郷公）に、河沼郡葉林（羽林）村に林昌寺が建てられた、とあります。その後の明暦２年（１６５６年　この時の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会津領主は保科正之公）天寧寺（会津若松市）の末寺になった、とあります。おそらく慶長１６年（１６１１年）の会津大地震で被災
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　したものを再建したのでしょう。本堂は太平洋戦争中に疎開していた、疎開者の不注意により出火して焼失。集落の集会所を
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　兼ね、一画に本堂形式を整えて再建。近年腐朽が激しくなったため、平成２２年（２０１０年）に建て替えられました。焼失した本
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　尊観音菩薩に代わり、平成１５年（２００３年）に本尊として新調した釈迦如来坐像を安置しています。

境内は鶴沼川による堆積丘陵地にあり、ここから東方向の水田となっているあたりが「最明寺渡し場」の舟着き場でした。そして寺から南方向の小さい神社の社を
「立川稲荷神社」と言います。往古は、最明寺渡のルート内にあったものを、現在地に遷座したものと推察します。鶴沼川の中州に勧請されたので、「立川稲荷神
社」としたのでしょう。

（こらんしょマップ　会津坂下町中心部）　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会津鑑には、柵、東西４８間（８７ｍ）、南北３０間（５５ｍ）、小堀館ト号ス、伊藤大膳（だいぜん）築キ後ニ渡部監物（けんもつ）居ル、と
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あります。築城年の詳細は記録されていません。一般的には「伊藤館」と称されています。古坂下（こばんげ）地区の高砂屋商店の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　裏の高砂屋工場のあたりで、工場西隣の民家の影になって見つけ難い所にある神社は八幡神社で、小堀館の屋敷神だったと
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　伝えられています。新編会津風土記では「古坂下館」と称されて、栗村氏の「小坂下（こばんげ）館」と混同されているので注意する
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　必要があります。と言うのは、栗村氏の「笠松館」のあった定林寺のあたりは、中世の頃「小坂下」と呼ばれたことがあるので、「古
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　坂下」と「小坂下」が混同されてしまい、保科正之公編纂の「会津風土記」の調査・記載ミスが、改訂版新編会津風土記でもその
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　まま転記されたので、ミスのまま継承されていると考えます。さらに会津古塁記でも、永仁２年（１２９６年）三浦石見守盛経（みうらいわ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みのかみもりつね藤倉盛経のこと、後に時盛）は、河沼郡古坂下に笠松館を築く、とあってこの問題をややこしくしています。「小」と
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　記載すべきところを、「古」としてしまっているからです。三浦石見守盛経は、定林寺の栗村館（笠松館）に住んで居たのです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　このあたりの旧町名は、二葉町と称されていました。館跡の名残りとして、東屋敷添、家ノ前などの字地名が残っています。館主の
伊藤氏、渡部氏の、その後の消息は良く分かっていませんが、伊達正宗の会津侵攻に関わりがあると考えます。しかし両氏から派生した家系や末裔とされる方々
が、古坂下地区にお住まいです。御稷神社境内の「台の宮公園」からこの辺りまでが、会津坂下町で最も古い縄文の頃から人々が住み始めた地域です。

（こらんしょマップ　会津坂下町中心部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会津坂下町の東端、大川（阿賀川）端の束原（つかはら）集落東端に位置する。（写真後方の建物が万蔵寺）会津坂下町内では
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　天台宗のお寺はここだけです。束原は越後街道高久の渡しの坂下側の舟着場のあった所で、「塚原」と書いた時期もあり、「塚」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つまり古墳が数多く存在していたことから、塚原の名が起ったと伝えられています。それらの古墳は度重なる洪水や新田開墾な
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　どで破壊されたと言います。さらに葦や萱など牛馬の餌の草を束ねる作業をした、と言う所から「束原」の名称が起こったともされ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ています。寺の創立開基不詳。本尊は地蔵菩薩坐像。寺は天文５年（１５３６年）白髭の大水で被災し、住職の良順が寺と村南に
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あった観音堂を、元禄１５年（１７０２年）に現在地に移築して、観音堂と共に再興したと伝えられています。本堂前（写真手前の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　建物）の観音堂の本尊は、一木造りで三面八臂（さんめんはっぴ顔が正面・左右の三面で、腕が八本）の馬頭観音立像（作像時期
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　不明）で、「日本遺産会津三十三観音の第十一番札所」の霊場となっています。立像は「りつぞう」と読まずに「りゅうぞう」と読ん
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　でね。

会津鑑に、塚原柵跡、東西３６間（６５．５ｍ）、南北４０間（７３ｍ）蜷川将監俊景（にながわしょうげんとしかげ）、正和２年（１３１３年）築キ住ス、子孫塚原ヲ家名トス、天文ノ
頃佐藤右馬之介頼春（さとううまのすけよりはる）住ス、子孫亦（また）塚原ヲ家名トス、とあります。会津古塁記では後年、芦名家重臣平田兵部少輔（ひらたひょうぶしょうゆう　兵部
少輔は軍政官の官職名、今で言う防衛副大臣、平田氏は芦名家の軍政官）の塚原館があったと言う所です。集落北部の水田に面した木立のあたりが館跡です。
わずかですが土塁と堀の名残りをうかがうことができます。

束原集落には、次ような伝説が語り継がれています。佐原十郎義連（さわらじゅうろうよしつら）の大蛇退治。
佐原十郎義連は会津平氏芦名氏の祖で、相模国佐原・三浦（神奈川県横須賀市、三浦半島）を領有していた坂東平氏の有力武将で、鎌倉幕府創設にも尽力
した人物です。文治５年（１１８９年）、奥州藤原氏征伐後、源頼朝より会津を拝領して会津入りし、住民の願いを聞いて上塚原の赤沼に住んでいた、大蛇を退治
して村人の苦難を救ったので、時の帝（後鳥羽天皇）から恩賞を授かったとの話が伝わっています。今は赤沼と言う沼はありません。後鳥羽天皇は政権奪還を画策
していたので、奥州のしかも鎌倉幕府の武将の動向などに興味がある訳が無く、恩賞を授かったと言うのは後世に付け足されたものでしょう。恩賞が出るとしたら
源頼朝からでしょう。佐原十郎義連は、大沼郡金山町の沼沢湖（火口湖）の大蛇退治の伝説も伝わっており、「金山祭り」では、佐原十郎義連の大蛇退治の寸劇
が、湖上で繰り広げられます。武将でなければ退治できないほどの大きな蛇なんている訳がないので、在郷領主か盗賊団を佐原十郎義連が討伐した故事を、美
談化して伝えているのでしょう。絶対的な統治者がいなかった無政府状態の会津を統制する為に、会津各地の在郷領主や無頼の盗賊団などを征討する戦闘を
行ったものと考えます。近年、佐原十郎義連は鎌倉幕府の政務官としての職務が多忙で、実際には会津には入っていなかった、との説が出てきています。義連の
後、２代盛連の子らの時代に会津に定着したので、鎌倉幕府の内部抗争に巻き込まれることなく、４００年間もの長きに亘って会津統治を行うことが出来ました。
これは日本史上極めて稀な例と言えます。神奈川県三浦半島には、佐原、芦名の地名が残されています。三浦半島は希少種の「三浦大根」の産地で、観音埼
灯台、油壺マリンパーク、八景島シーパラダイス、三笠記念公園のほかマリーナや海水浴場などの観光スポットが点在しています。
また湘南海岸と共に、私の若かりし頃のプレイスポットであり、会津芦名氏を再認識する場所でもありました。

（こらんしょマップ　会津坂下町東部）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　喜多方街道を北へ八千代橋を渡った所、中政所（なかまんどころ）集落のほぼ中央に位置する。創建年不詳。創建当初の本尊は釈迦
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　如来でしたが、いつの頃からか木造薬師如来坐像に変わり、現在に至ります。この仏像は高寺下ろしの一つと伝えられていて、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小ぶりな像ですが、肉付けが豊かで量感のある堂々とした体躯をしています。柔和で穏やかな作風は、定朝様式の流れをくむ平安
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　時代後期の仏像とされています。会津坂下町指定文化財。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中政所集落は、異本塔寺長帳の天喜５年（１０５７年）の神役目録に記載があって、古くから開かれた集落です。昭和５２年（１９７
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　７年）に寺を改築した時に、「三界萬霊（さんかいばんれい）元文四年（１７３９年将軍徳川吉宗の時代）」と墨書された棟札が見つかりま
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　した。言い伝えでは往古の集落は、現在地より約０．５Ｋｍ程北にあったそうです。圃場整備前の発掘調査で集落跡が確認されて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　います。移転理由は、おそらく水害を避けて移転したものと考えられます。集落の移転と共に、この地に寺も移転して来たのでしょう。

三界萬霊（さんかいばんれい）とは、三界は仏教語で欲界・色界・無色界あるいは、仏界・衆生界・己界とも言い、または過去・現在・未来を言います。欲界と言うのは食欲・
性欲・睡眠欲を言います。色界は食欲よりも性欲が強いことを言い、無色界は性欲の無い心の世界を言います。萬霊とは、欲・色・無色界の有情無常の精霊などの
あらゆる世界をさし、全ての生物の生々流転（せいせいるてん）して、止むことのない世界のことを表わしています。って、こんな解釈で良かったのかな・・・？ようするに、何
でもかんでも、ぜぇ～んぶってこと・・・です。お寺の境内に「三界萬霊」と書いて石碑や木札を建て、それに全ての世界の精霊を宿らせ、それらを供養する事が三界
萬霊供養です。三界萬霊や無縁仏を供養するものとされています。

（こらんしょマップ　会津坂下町中心部）